STG/I:第百四十四話:敵

 


 どんな人もパニックの中では冷静にいられない。
 それは始まると疫病のように広がった。

「終わりだー!」
 諦めきれない者。
「死のう、死にたい」
 悲嘆に暮れる者。
「助けて・・誰か助けて・・」
 助けを請う者。
「イヤだ、イヤだ、もうイヤだ」
 逃げる者。
「じゃあな、彼女と一緒に最後の時を過ごすよ」
 覚悟を決める者。
「最後のその時まで逃げるなっ!」
 誰よりも逃げたい者。
「あがーーーっ!!」
 奇声を上げる者。
「・・・」
 現実を受け容れられない者。

 一見それは異なる反応にも見えたが、パニックに陥っている点では同じだった。
 パニックへの耐性は、才覚や環境、経験によって上下するが、遅かれ早かれ坩堝に巻き込まれることは避けられない。
 自我を保つには早急に現場から離れるしかない。
 それが出来ない場合、ソレを少しでも先延ばしにするには、”目的意識”を持つこと。
 パニックの衝撃より上回る「明確に刻まれた目的意識」。
 それが、ある程度ソレを遠ざけることに貢献するだろう。
 だが、それもいずれ瓦解する。
 その時、人は理性を失う。

 その者は叫んでいた。

「私は日本・本拠点宰相のエイジ!
 攻撃する理由を教えて下さい!
 私達は味方です!
 私は宰相のエイジ!日本・本拠点の代表です!」

 彼の通信相手、それは・・・

「こちらSTG国際連合軍の統括部隊、アメリカ本拠点所属D2M隊です。貴殿らは敵宇宙生物と認定された。これはマザーによる認定であり指示である。よって、殲滅する。以上」

 その時、武者小路はアースの言葉を思い出していた。
 不意にイシグロが居た筈の方を見たが、
 彼の姿はそこに無かった。

*
 
 時を少し遡る。

 マルゲリータやビーナスが告げたのは恐ろしい情報だった。
 口火を切ったのはマルゲリータ。
 走って入室すると、あの無口だった彼女が叫んだ。
「エイジさん、本拠点を停めて!」
 呆然とする彼を見て、マルゲリータは何を思ったかビーナスにバトンを渡す。
「ビーナスちゃん後をお願い。私の代わりに説明して! 私、行ってくるから!」
「畏まりました。マスター・マルゲリータ」
 ビーナスは一礼すると話し出す。
 マルゲリータは走り出すと作戦室を後にする。
 ここにいる誰しもが呆然としている。
 ミリオタは顔をクシャクシャにして項垂れている。

「日本・本拠点の管轄エリアは、現在STG国際連合軍、所謂、多国籍軍が作戦を展開しており、彼らは全機フレンドリー・ファイヤーをオン。銃口は我々の本拠点を向いております。最前列にアタッカー特化10武装、最大射程の長距離砲撃である『天槍』が配備され、その射程距離圏内にもう時期当本拠点は入ります」

 ほとんどは何を言っているか理解出来なかった。
 これほど明確なのに。

 たった今、
 アースに「地球は終わり」であることを告げられ、その心の整理も着かないままに鳴り響いた絶望のゴング。
 しかもそれが味方である筈の地球人によって成されようとしている。
 普通に考えれば受け容れがたい言葉だ。

 ビーナスは彼らの反応を待った。

 僅かな静寂の後、
 透き通るような声が割く。

「義母さん! 本拠点緊急停止!」
「緊急停止します」
「重力の影響を可能な限り安全レベルで確保! マルゲリータ中隊長からの情報を元に『天槍』の射程外で停止出来る程度に逆噴射して下さい!」
「安全圏で逆噴射」

 地鳴りのような音が僅かに聞こえる。
 天球型モニターに見入る。
 エイジの目線に全員が釣られる。
 明らかに本拠点は速度をを弱め、モニター上でも逆噴射が確認。
 中にいると重力の抵抗はほぼ感じない。
 
「もっと聞かせて下さい!」

 エイジだけが声を上げていた。
 ほとんどのプレイヤーは何を言っているか理解出来ない。
 まだ今しがたのアースの言葉をリフレインしている。

 何故、地球は攻撃されるのか。
 何故、一週間なのか。
 これは現実のか、ゲームなのか。
 本当に地球は終わりなのか。

 何故、本拠点が止まったのか。
 何故、宰相は叫んだのか。
 何故、凍結されている筈の搭乗員パートナーが本身で歩き回っているのか。
 何故、部隊パートナーが戦闘装束で突っ立て居るのか。

 彼らが答えを理解する前に、
 ビーナスが口を開く前に、
 それは始まった。

 作戦室が真っ赤に染まる。
 本拠点のアラート音声がゴングを鳴らす。

「STG多国籍軍による本船への攻撃を確認。武装は『AT10あ199天槍A』投擲数3。着弾まで、5・4・3・・・」
 武者小路が絶叫する。
「シールド最大っ!」
 彼の甲冑が瞬時に燃えさかる。
「着弾」

 衝撃。
 地鳴り。
 警報音。
「シールドを30%貫通、隔壁閉鎖」
 悲鳴。
 絶叫。
 それらが耳を満たす。
 しかし義母は容赦なく続けざまに言った。

「第二弾の発射を確認。8・7・6・・・」
「着弾予測位置にシールド集中!」
 武者小路が吠える。
 位置を告げないと全方位シールドになることに気づく。

「着弾」

 衝撃。
 悲鳴。

「シールドを10%貫通、衝撃波、隔壁閉鎖」

 衝撃。
 怒号。
 各々が作戦位置に走る。

「第三弾の発射を確認。『AT10あ199天槍C』15・14・13・・・」
「着弾予測位置にシールド50%を集中!」
 武者小路。
「分裂」
「ぶっ?!」
 天槍タイプCは低速ながら内部から無数の槍を射出する天槍の亜種武装。
 聞き逃した。
「天照ローブ壱接続!
 想定着弾位置をカバー!」
 今度はエイジが吠えた。
 左目を手の平で覆っている。

「2・1・着弾」

 今度は静かだった。

 黄金色に光るエネルギー・シールドが盾のようにモニターに描画されている。
 武者小路は驚きをもってそれを見つめた。
 広範囲に広がった無数の小型の天槍を天照が防いでいる。
 武者小路はエイジを見つめる。

「義母さん! シャドウのアップグレード完了はいつ?!」
「凡そ一時間後です」
「・・・次は!?」
「ありません。現在、天槍の有効射程外。位置情報の補正中」
「エイジ君・・・」
「武者小路さん、私は念のために天照に搭乗します!」
「それは出来ません」
 義母の声。
「えっ? あ・・・そうか・・・」

 エイジは作戦本部に居ながら天照にリンクしていた。
 その時、彼は左目を押さえている。
 彼の左目にはモニターが描かれていた。

「やっぱり遠隔だと微妙なズレがある・・・」
「エイジ君!」
 武者小路は知らず声をかけた。
 何か具体的に聞きたいことがあったわけではない。
 勝手に声が出たのだ。
「あっ!・・・御免なさい勝手なことやって」
 彼は頭を下げた。
 武者小路は何かを咀嚼するように口を何度か僅かに動かすと、言った。
「お見事・・・」
「いえ、気をつけます」
 頭を下げた。

(この咄嗟の決断力・・・
 そして天照、もう動かせるのか・・・
 私の次の動作は相手に読まれていた。
 彼が咄嗟にカバーしてくれなかったら被害は現状の比じゃ無かっただろう・・・
 左目を時折押さえていたのはそういう意味だったのか・・・
 ゲーム世代は親和性は我々とは違うな・・・)

*

 エイジは天照のパイロットだ。
 それを羨む者は居ないだろう。
 少なからずアレがどういうモノかを知る者には。
 シャドウは専用のアップグレードを行っている。
 元に戻すことは出来ないだろうとエセは言った
 そして、それはエイジも似たようなものだった。

「コックピットに一度座ったら、もうそのアバターは使えないと思った方がいい」

 彼は何故か嬉しそうに言った。
 エイジは不思議と怖くなかった。
 寧ろ感動の中に居たと言っていい。

 搭乗員は天照が起動するとコックピットに固定され起動中は降りることが出来ない。
 戦闘もののアニメや漫画には良く出てくるが、実際にそれをされると誰しもが不快感と恐怖を本能的に感じるだろう。
 自由を奪われるとはそういうことだ。
 下半身をダイブ・ポイントと呼ばれる穴に挿入し、基本的に下半身は自由に動かすことが出来ない。
 タールの中に浸かるようなもので、それは極めて不快感に満たされた。
 力を込めればゆっくりと中で動くことは出来る。
 だが、それは極めてゆっくりであり呪いのように身体に纏わり付いた。
 中は、S字の椅子に座るような形状になっており、身体を屈曲させる。
 ゲル状の素材で出来ており、挿入後に圧着される。

 上半身はパイロットスーツが出ている状態だが、下半身と両腕を固定されているので動き回ることは出来ない。
 両手はアーム・ポイントと呼ばれる装具に手を突っ込み下半身と同様な感覚を得る。
 概ね肩の位置にあり、常に手を上げ前に出した姿勢になる。
 中はダイブ・ポイント同様な素材で、装具そのものは動かない。
 中に取っ手のようなものがあり、掴める。
 丁度、マジックハンドの握りてのような感じだ。

 そして頭部のバイザー・ポイント。
 視野とモニターが直結され、見えたものがSTGと同じ状態になる。
 頭部は覆われ、装具は鼻の位置までくる。
 装着されると天照とシームレスな情報交換が可能で、言語だけでは無く脳波で指示を出せる。
 搭乗時、頭部から装置が挿入され、ナノマシンによりアバターの頭脳チップに直接接続。
 その際に痛覚遮断処置が施される為、痛み等は無い。
 エセが再利用が難しいと言った理由だ。
 頭部は可動域がある。
 搭乗せずとも本拠点からなら何処からでも動かせるリンク機能がある。
 だが、その能力は大幅に制限を受ける。

 ある作戦室メンバーは、そのコックピットを見て「張りつけだ・・・」と形容した。
 なお、手は横ではなく、前に出しているのでポーズは異なる。
 搭乗員側はアップグレードを必要としなかったが、一度搭乗するとアバター本体が再び使用出来るかどうかは判らないと開発者であるエセから説明されている。
 搭乗時に必要な接続処理が施される為だ。
 また、極めて負荷が高い為、肉体的、脳的に再利用出来るかは怪しいという判断だった。

 エイジは制作の仮定で何度かエセを訪れ訊ねたことがある。
 彼は直接的な回答はしなかったが、一言「あの設計思想は竜頭巾君の使ったデス・ロードと、君から聞いたバルトークの話がヒントになった。君が本当に困った時、真価を発揮してくれる設計だと思うよ。代償は必要だけどね」と笑って言った。
 エイジは意味を理解しかねたが、彼はそれ以上何も答えてはくれなかった。
 
 皆がアースの部隊に一喜一憂している時もエイジは天照のシミュレーターに乗っていた。
 リンク機能を最大限に活かしたのだ。
 それはエセのアドバイスからだった。

「アレはいきなり乗っても動かせるもんじゃないからよく練習しときな。本番とシミュレーターでは天と地だろうけど、やらないよりはいい」と彼は言った。

 その意味は乗って直ぐにわかった。
 全てが規格外だった。
 空いた時間にはシミュレーターに通い詰める。
 立場上、居なければいけないことは多い。その際にリンク機能を使う。
 皆に黙って会議中もリンク機能を使い乗っていた。

 STG28は事実上操縦しているのはパートナーである。
 それを機械的にサポートしているのが本船コンピューターであり、搭乗員は言うなれば大まかな行動指針を与えているに過ぎない。
 その為にプロファイル・セットやプラニング・セットがある。
 咄嗟の事象にはセットプログラムによって反応する。
 全ての人間が咄嗟に多くの事象に対して行動出来るわけではない為だった。

 予め大きな指針をプログラムしておく。
 自動運転には必ず間違いが起こる。
 現状の解釈の仕方で間違いを選択することもある。
 細かく規定していればいるほど不整合は起きづらい。
 でも起きないわけではない。

 加え何をもって正解とするかは個々のパイロットによって事なる。
 それを補うためのパートナーでもあった。
 パートナーは常にセットを最適化して行く。
 それでも遭遇したことが無い事象には見本を使わざる終えない。
 経験を繰り返さない限り最適化は成されない。

 STG28にはプロファイルを得意とするプロファイラーやプランナーがフリーで活動をしていたりする。
 戦闘で戦果貢献出来なくてもこうした活動で戦果を得ることが可能だ。
 もっともその戦果は多くは無い。
 そうした活動を主にして食っているプレイヤーは極一部に限られる。
 多くの部隊員は所属する部隊やフレンドのセットをコピーさせてもらう。
 過去の英知を使わせてもらうのだ。
 結果、カラーが分かれていった。

 部隊によっては部隊セットを強制するが、その範囲設定は自由で、隊長に権限が委ねられている。
 基本セットのみであったり、特化セットもだったり、全てであったり、例外を認めない場合であったりと自由に設定出来た。基本セットを共有しない場合もありだが、多くの場合、基本セットは共有される。
 同時にそれを期待してフリーのパイロットは入隊するのだ。
 保安上、除隊と同時にセット情報は消される。
 それでも入隊時にプランを見て、除隊後に記憶したコピーをメイクするプレイヤーは後を絶たない。
 自分でメイクしたセットは公開することも非公開にするのも自由。
 ほとんどの場合、フレンド以外には公開されない。
 取り逃げを防ぐ為だが、基本的にフレンドを解消した次点でセットも抹消される。
 同様に取り逃げを試みる者は多い。

 エイジはシューニャ・アサンガをベースに、ドラゴン・リーダー、竜頭巾のプロファイルセットを使っていた。
 それは必ずしも自分のプロファイルとはマッチしなかった。
 シューニャはサーチャー寄りのオールランダー。
 対して、彼は完全なディフェンダー型だ。
 ドラゴンはアタッカーだし、竜頭巾に至ってはアタッカーの中でも極端なパイロットだった。

 それ故、当初は天照の起動時にほとんどがグレーアウト。
 適合しないことを意味する。
 天照は基本的に動けない。
 また、攻撃も出来ない。
 超巨大なエネルギーの盾を幾つも発生させ、その強弱を調整したり広げたりするだけの能力。
 言うならば、イージス・ガードの超強力版である。

 その際に役にたったのは先だってのブラック・ナイト騒動のもの。
 彼は本拠点回復後に、自らの経験を忘れないウチにとセットを構築していた。
 それらが見事にマッチする。
 彼は共に戦ったガーディアン達と話し込む中で、元々プランニングが好きだったこともあり、ガーディアン特化型のモデルも数多くフレンドとしてゲット出来ていた。
 「君なら信用できる!」と、ほとんど全ての搭乗員が提供してくれる。
 同時に彼もまた選りすぐりのプランを提供すると大いに喜ばれ、信頼は深まった。

 プランセットは言うならば虎の子である。

 自らの得手不得手を晒すような行為なので、大して親しくも無いのに「プランをコピらせてよ~」とか言うのは御法度である。(横行しているが)
 本来は、本当に心を通わせた相手にだけ披露される。
 ましてやコピーさせるのは余程のこと。
 アフロディーテ辺りは特殊過ぎて実戦で役に立つかは疑問であったが、エイジは思想が個性的で夢中になって研究したものである。

 天照は本拠点から一定の距離で発現し、本拠点の動力でもって稼働。本拠点の力を実質使い放題。
 その為、結果的に本部の一部の者以外はパイロット候補にすらなれない事情があった。
 必要な権利があるからである。
 ベースとなる司令船STG天照は初期配布に近い状態で戦闘能力は無い。
 コックピットのみが専用に改造されてある。
 天照の思想は大筋でこれまで同じものでSTGの複合体である。
 違うのは直接ドッキングしない点。
 STG天照は、言うならばドローンショーのドローンだ。
 各々制御された状態で宙空に射出され、エネルギーワイヤーで繋ぎ本拠点からのパワーを供給。
 司令船の指示によって無数のエネルギー・シールドを展開させる。
 遠くから見ると巨大な宇宙船だが、その実態は複合体。
 司令船のみが指示を出せる。

 本拠点のシールドと同等の強度を持ち、シールドの操作をすることで複合的な強度増強効果を得る。
 それを為し得たのがイージス・ガードで得た仕組みと実戦経験だった。
 一つ一つの円は中心部が最も強固であり、周辺部に行くほど弱くなる。
 だが、アクティブに動かすことで中心部を移動させ通常では得られない強度を得ることが出来る。
 この動作にはアフロディーテのプロファイルを取り入れた。

 問題も幾つかあった。

 一つは司令船が破壊されると性能は著しく低下する。
 分散化しているので無効になることは無いが、司令船は負荷が極めて高い為、集約処理出来る為のパートナー及び本船コンピューターのアップグレードは必須であり、搭乗員も相応に訓練する必要がある。
 表向き上、メインパイロットはエイジ、サブパイロットが武者小路になっていたが、武者小路はほぼ訓練をしていない。
 リンク機能を使えるのもメインパイロットに限られる。
 権限の都合で武者小路が搭乗しても最大でも30%程度しか能力を発揮出来ないことが判っている。
 マニュアル等は熟読済みで、何度かテスト搭乗みしたが、それ以後彼は載っていない。
 当然、自身のパートナーをアップグレートもしていない。
 アップグレードとは言うが、実際には天照用に最適化する為、逆に通常のSTGでは使えなくなってしまう。
 パイロットになるには権限をある程度使える立場が必要だ。
 武者小路以上に発揮するとなると本拠点副隊長以上の立場が必要になる。
 肝心の本拠点副隊長であるミリオタは素戔嗚隊のパイロットだ。
 ケシャはログインしていない。
 結果、サブパイロットは三人迄設定出来たが、残り二席は空白だった。

 細かい問題には弾いたのがエネルギーだった場合どこへ飛んでいくか制御が難しい点等がある。
 近間が交戦エリアだった場合は危険になる。
 その為、天照の起動は本拠点を離れた位置を想定されている。
 内側には本拠点・防衛隊が配備。
 戦闘エリアは外宇宙と内側を想定している。
 外宇宙は天照の恩恵を受けられない。

 天照のメリットは多い。
 司令船を除き、構成STGは初期STGに近い状態で稼働させることが出来る為、損失した箇所を即座に別なSTGで補うことが出来る。
 天照を拡張させるSTG蕾は本船コンピューターだけで操舵可能だ。
 また、初期オプションで導入が出来るシンクロナイズド・エナジーをセットすることで、既存のSTGをドッキングさせ、その部分だけある程度独立して制御することが出来るようにもなる。
 ドッキングしたSTGがアタッカー特化なら守りながら攻撃が可能。
 ガーディアンを接続すれば、より強度の高い防衛が可能になる。
 それらはほとんどシューニャ・アサンガの戦果によって建造されている。

 司令船は尋常ならざる負荷がかかる。

 当然ながら初期状態のSTGでは数千機のSTGを同時に処理できない為、本拠点コンピューターおよび並列接続した部隊パートナーによって賄われる。
 だが、搭乗員はそうしたことが出来ない。
 あくまでも主権者の意思が重要になるSTGにおいて司令船STG天照は、権限が拡張されている点からも全てパートナー任せとは行かなかった。

 本拠点が再び赤く染まる。

「STG多国籍軍、日本・本拠点へ向けて行軍を開始」

 義母の声が無情に響き渡る。 

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