「これがあの英雄か・・・。聞いてはいたが想像以上だな。惨めなもんだ」
この近辺にある砂漠にある店はこの１軒のみ。
それでも客はけして多いとはいえなかった。
「ほーら、お口あーんしてごらんよ」
「お前やっさしいねぇ」
「これだけ暑いからよ。喉もかわいてるだろうからなあ」
「おら、口開けさせてやるぜ」
少し離れたカウンターでそのやり取りを見ている男が一人。
「止めさせて下さい」
カウンター越しにウェイトレスらしき女が小声で男に声をかけた。
場に不釣合いに小綺麗な格好をしている。
「権限外だ」
一際大きな声が上がった。
「うまいうまい！ほーら残さず飲めよ。しーこいこいこいこい」
彼らの周囲からどっと笑いが湧く。
「俺も飲ませてやるぜ」
「便所にいくのもめんどくせえな。俺もココでしてくか」
人垣ができていた。
「お願いです。彼ら止めて下さい」
「無理だ」
ウェイトレスはその言葉を振り切るように歩き去った。
男は独り言のように呟く。
「あれだなあ。女ってヤツはいつまでたっても夢みるもんだな」
「そうでもなかろう。少なくてもあのシーンを見せられた女は全員は彼に幻滅したよ」
耳に差し込んでいるイヤフォンから音が鳴った。
「そうかあ。としたら、ミドリの憧れは相当なものだな」
ミドリがカウンターを離れ男たちに近づくの見える。
「ちょっと。注文頼む」
男は女を呼び止めた。
ミドリは一瞬躊躇したが、男の元へ向かった。
「馬鹿な真似はよせ。処分されるぞ」
「・・・」
彼女の顔は平静そのものだったが、目は怒りは隠せないでいる。
踵をかえす彼女の腕をつかんだ。
「お客さん！」
カウンターからマスターのドスの聞いた低音が響く。
「ミドリに手荒な真似は勘弁し下さいよ」
「わかってるって。さっきから誘っているのに無視しがやるかツイだよ」
マスターは安堵した表情で仕事に戻った。
「彼に何かすることは法律違反だ。知らないわけもあるまい」
「・・・」
彼女は応えなかった。
「ミドリちゃんこっちもオーダー」
他のテーブルかも声がかかる。
射るような目線を彼女に向け男は「同じもの」と言って空のコップを小さく降った。
彼女は辛うじて営業スマイルを作りテーブルへ走る。
顔がにやけてどうしようもなかった。
「にやけているぞ」
「ミドリのやつ・・・元英雄にホの字らしいぜ」
「おいおい、あんなドブネズミの何がいいのかねえ。
女ってのはわからねぇなあ。クソ・・・あやかりたい。
あぁ・・・。どうりでこんな溝掃除みたい依頼を文句も言わず受けるわけだ。
報告しとくべきかあ？」
イヤフォンの男がこたえた。
「まぁ、いらねんじゃね。職務は真っ当しているし。
監察官で他にこんなクソみたいな仕事するやつはもういないだろう」
「確かになあ。今まで全員止めていったぐらいだ。
それも今回の調査でもう終わりだろう」
「本部の心配も徒労に終わったわけだ。
クソみたいな仕事と、このゴミタメからもようやくおさらば出来る。
でも、ま・・・
さんざん虚栄心ってヤツは満たしてもらったぜ」
「本気で言っているのか」
「何を・・・。あれほどの英雄が地に落ちきった姿みて何も感じないわけなかろう」
「英雄なんてこんなもんだよ」
「ふっ言ってろ。俺だってなあレンジャー出なんだ。
ヤツの栄光は嫌というほど知っている。
一時は憧れもした・・・。
でも、これが現実だよ。
英雄なんてなるもんじゃないな・・・」
「愛しさあまって憎さ１００倍か？酷いね」
「うるせーよ」
「羨ましいね。この砂漠で水浸しだ」
「ああ。さすが英雄は違うな」
「英雄だからな」
「ここは英雄に食料も提供してあげようか」
「いいねー。ほら、口あいて待ってるぞ」
場が賑わった。
環の男たちがベルトを外しだす。
「お客さん。それはいけねー」
男たちは降って湧いたように殺気立った。
「なんだとお」
ズボンを脱ぎかけた男はその手を止め、全員が振り返る。
「その辺で勘弁して下さいよ。あれだ、臭くてかなわないでしょお客さんらも」
男たちは急に合点がいったという顔をみせ自分達がまだ食事中であることを思い出した。
「きたねえ！マスター早く掃除しろ」
最後の賑わいをみせ宴会は終わった。
帰り際数人が横たわっている男に蹴りをいれている。
バケツを持ったウェイトレスが男に走りよった。
「ミドリ中尉め・・・」
「なるほど。あれなら職務範囲内の行為。合法だ。彼女も考えたな」
「あー！ミドリちゃん駄目だよ。おらお前ら！何やってる気が利かねえ女共だ！」
「ゴメン皆、私にやらせて！お願いします。汚れた服は私が洗いますから」
走りよろうとする他のウェイトレスを目線で正視し、マスターに強く訴えた。
「あーあー」
マスターは彼女の言い出したら引かない性格をよく知っているようで諦めたようだ。
顔は微かに紅潮し口元には下卑た笑みを浮かべていた。
床の汚水を丁寧に雑巾で拭き取り手際よく片付けた。
外野が騒がしいが彼女の耳には一切届かなかった。
「お顔を拭って下さい」
綺麗な手ぬぐいを男に差し出す。
「ミドリちゃーん、そんな小汚い男に下ろしたての手ぬぐいなんて勿体ない」
「ごめんなさい、私に後で買い取らせ下さい」
外野が一層騒がしくなったがその一切を無視した。
「これでお顔を拭って下さい」
それまで死んだように動かなかった男が初めて彼女の顔をみた。
「お嬢さん・・・なんで泣いているんだい」
「え・・・」
彼女の目には涙が浮かんでいた。
「何か悲しいことがあったのですか」
「いえ・・・平気です」
「・・・私の為に泣いているだね」
「ごめんなさい。・・・私には何もしてあげられない」
彼女は我慢できずに涙をこぼしてしまう。
「何もしなくていい。何かしたら死罪らしいからね」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。私は卑怯者です」
「違う。あなたは私の為に泣いてくれた。それだけで充分です」
「私の姉は、姉は・・・」
「言わなくていい」
「ラス・スエニオス・アオイです。姉は今でも貴方を信じてます。私も・・・」
「アオイか・・彼女はいいスナイパーだった。
ありがとう。
お帰り・・・元に世界に。
・・・涙をふくんだ」
ジョニーの言葉を聞き背後に目をやると一瞬で涙を拭き平静を取り戻した。
「おーらよっと。
英雄さんよ。
もういいだろう。
サービスタイムは終了だ」
首ねっこを掴んだマスターはえらく不機嫌そうに声を荒らげた。
彼をラクラクと持ちあげると宙に浮かせる。
「た、タオルを・・」
「いらねぇーよ」
戸口までそのまま歩くと、ゴミでも捨てるように放おって投げた。
「俺からのプレゼントだ」
そう言い放つとツバを一回吐き捨てる。
一際大きなそれは見事な放物線を描いて彼の薄汚れた首に落下した。
「ストライーク」
「失せなゴミ」
「ミドリ・・・厳罰ものだぞ」
氷の針のように冷たい言葉で投げかけたが彼女はそれを完全に無視した。
「構いません」
そう言ってカウンターに戻ると、何事もなかったかのようにウェイトレスとしての仕事を再開している。
「むしろ今のかまかけは流石と言うべきかな」
イヤフォンの男は言った。
「かもな・・・いい芝居だ」
「声音に反応がなかった。ジョニーのやつ・・・」
「完全に終わったか」
「終わったな」
「女はこええなあ」
「ああ。女は怖いよ」
「後は野となれ死体となれか」
その日から嘗てジョニー・Ｂ・ジョーと呼ばれた英雄を目撃したものはいなくなった。
数日後、その店からミドリの姿も消える。
英雄と呼ばれた男の存在は過去となる。
荒廃した工場。
嘗てバーサーカーと呼ばれたヒューキャストとレインジャー達によって戦いが繰り広げられたことを
知るものはもういない。
「よしいいぞ京極」
「メイン電源オン。
あ、人工筋肉が痙攣するかもしれないから動き始めの左足にきをつけてくれ。
癖があるようだ。
下手するとタマタマ蹴り潰されるぞ」
「下品だねぇ。タマタマだって」
「タマタマ メタリックー！タマリックー！」
「わははははは」
「ワクワクしますね」
「最初、私が最初だよ。いいね私が最初に声かけるから」
「無駄だ。もうマスターはすりこんである」
「えーーーーーーーっ！」
「皆さん下がって、下がって下さい。本当に蹴られますよ」
「ドゥーラ、リフトアップ」
斜めに立てかけてあったカプセル状の製造ユニットが垂直に立ち上がる」
カプセルが開くと、そこには黒いボディにオレンジのラインが施された鮮やかな流線型の女形ヒューキャスト、ヒューキャシールが固定されていた。
今時のモデルには珍しく妖艶な姿をしている。
わずかに見える人工皮膚の見える口元は、全てを拒絶するよう真一文字に閉じられていた。
真っ赤なルージュがひかれている。
その唇には覚えがあった。
多くの者達が固唾を飲み込んで見つめる。
「カッチョいい・・・。バーン凄いや」
左足が突然動いた。
一斉にどよめく。
「おー！いい蹴りだ」
「タマどころか真っ二つだな」
拘束具が解除され、彼女は一歩前へ踏み出した。
そこへ手を差し出す男。
「ドゥーラ・・・お帰り」
手をとり声の方向に首を向ける。
「マスター・ジョニー。ご命令を・・・」
「最初の任務だ。今から言う仲間を登録し、戦闘データをダウンロード。
右からバーン・フォスター」
クールズ、
ジュゲ、
ハリュウト、
エルディナ、
ジオーサ、
京極堂、
ジーク、
そして、そこに寝ているのが」
「通行人A」
「父さん！しゃんとして」
「なんとまぁ随分と色っぽく作ったな。お前さんは機械と一発やろうってのか」
「父さん！！」
「ふっ、カンナだ。命を共有する者たちだ」
「生体認証登録完了。戦闘データをダウンロードします」
「さあ、はじめようか」
この近辺にある砂漠にある店はこの１軒のみ。
それでも客はけして多いとはいえなかった。
「ほーら、お口あーんしてごらんよ」
「お前やっさしいねぇ」
「これだけ暑いからよ。喉もかわいてるだろうからなあ」
「おら、口開けさせてやるぜ」
少し離れたカウンターでそのやり取りを見ている男が一人。
「止めさせて下さい」
カウンター越しにウェイトレスらしき女が小声で男に声をかけた。
場に不釣合いに小綺麗な格好をしている。
「権限外だ」
一際大きな声が上がった。
「うまいうまい！ほーら残さず飲めよ。しーこいこいこいこい」
彼らの周囲からどっと笑いが湧く。
「俺も飲ませてやるぜ」
「便所にいくのもめんどくせえな。俺もココでしてくか」
人垣ができていた。
「お願いです。彼ら止めて下さい」
「無理だ」
ウェイトレスはその言葉を振り切るように歩き去った。
男は独り言のように呟く。
「あれだなあ。女ってヤツはいつまでたっても夢みるもんだな」
「そうでもなかろう。少なくてもあのシーンを見せられた女は全員は彼に幻滅したよ」
耳に差し込んでいるイヤフォンから音が鳴った。
「そうかあ。としたら、ミドリの憧れは相当なものだな」
ミドリがカウンターを離れ男たちに近づくの見える。
「ちょっと。注文頼む」
男は女を呼び止めた。
ミドリは一瞬躊躇したが、男の元へ向かった。
「馬鹿な真似はよせ。処分されるぞ」
「・・・」
彼女の顔は平静そのものだったが、目は怒りは隠せないでいる。
踵をかえす彼女の腕をつかんだ。
「お客さん！」
カウンターからマスターのドスの聞いた低音が響く。
「ミドリに手荒な真似は勘弁し下さいよ」
「わかってるって。さっきから誘っているのに無視しがやるかツイだよ」
マスターは安堵した表情で仕事に戻った。
「彼に何かすることは法律違反だ。知らないわけもあるまい」
「・・・」
彼女は応えなかった。
「ミドリちゃんこっちもオーダー」
他のテーブルかも声がかかる。
射るような目線を彼女に向け男は「同じもの」と言って空のコップを小さく降った。
彼女は辛うじて営業スマイルを作りテーブルへ走る。
顔がにやけてどうしようもなかった。
「にやけているぞ」
「ミドリのやつ・・・元英雄にホの字らしいぜ」
「おいおい、あんなドブネズミの何がいいのかねえ。
女ってのはわからねぇなあ。クソ・・・あやかりたい。
あぁ・・・。どうりでこんな溝掃除みたい依頼を文句も言わず受けるわけだ。
報告しとくべきかあ？」
イヤフォンの男がこたえた。
「まぁ、いらねんじゃね。職務は真っ当しているし。
監察官で他にこんなクソみたいな仕事するやつはもういないだろう」
「確かになあ。今まで全員止めていったぐらいだ。
それも今回の調査でもう終わりだろう」
「本部の心配も徒労に終わったわけだ。
クソみたいな仕事と、このゴミタメからもようやくおさらば出来る。
でも、ま・・・
さんざん虚栄心ってヤツは満たしてもらったぜ」
「本気で言っているのか」
「何を・・・。あれほどの英雄が地に落ちきった姿みて何も感じないわけなかろう」
「英雄なんてこんなもんだよ」
「ふっ言ってろ。俺だってなあレンジャー出なんだ。
ヤツの栄光は嫌というほど知っている。
一時は憧れもした・・・。
でも、これが現実だよ。
英雄なんてなるもんじゃないな・・・」
「愛しさあまって憎さ１００倍か？酷いね」
「うるせーよ」
「羨ましいね。この砂漠で水浸しだ」
「ああ。さすが英雄は違うな」
「英雄だからな」
「ここは英雄に食料も提供してあげようか」
「いいねー。ほら、口あいて待ってるぞ」
場が賑わった。
環の男たちがベルトを外しだす。
「お客さん。それはいけねー」
男たちは降って湧いたように殺気立った。
「なんだとお」
ズボンを脱ぎかけた男はその手を止め、全員が振り返る。
「その辺で勘弁して下さいよ。あれだ、臭くてかなわないでしょお客さんらも」
男たちは急に合点がいったという顔をみせ自分達がまだ食事中であることを思い出した。
「きたねえ！マスター早く掃除しろ」
最後の賑わいをみせ宴会は終わった。
帰り際数人が横たわっている男に蹴りをいれている。
バケツを持ったウェイトレスが男に走りよった。
「ミドリ中尉め・・・」
「なるほど。あれなら職務範囲内の行為。合法だ。彼女も考えたな」
「あー！ミドリちゃん駄目だよ。おらお前ら！何やってる気が利かねえ女共だ！」
「ゴメン皆、私にやらせて！お願いします。汚れた服は私が洗いますから」
走りよろうとする他のウェイトレスを目線で正視し、マスターに強く訴えた。
「あーあー」
マスターは彼女の言い出したら引かない性格をよく知っているようで諦めたようだ。
顔は微かに紅潮し口元には下卑た笑みを浮かべていた。
床の汚水を丁寧に雑巾で拭き取り手際よく片付けた。
外野が騒がしいが彼女の耳には一切届かなかった。
「お顔を拭って下さい」
綺麗な手ぬぐいを男に差し出す。
「ミドリちゃーん、そんな小汚い男に下ろしたての手ぬぐいなんて勿体ない」
「ごめんなさい、私に後で買い取らせ下さい」
外野が一層騒がしくなったがその一切を無視した。
「これでお顔を拭って下さい」
それまで死んだように動かなかった男が初めて彼女の顔をみた。
「お嬢さん・・・なんで泣いているんだい」
「え・・・」
彼女の目には涙が浮かんでいた。
「何か悲しいことがあったのですか」
「いえ・・・平気です」
「・・・私の為に泣いているだね」
「ごめんなさい。・・・私には何もしてあげられない」
彼女は我慢できずに涙をこぼしてしまう。
「何もしなくていい。何かしたら死罪らしいからね」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。私は卑怯者です」
「違う。あなたは私の為に泣いてくれた。それだけで充分です」
「私の姉は、姉は・・・」
「言わなくていい」
「ラス・スエニオス・アオイです。姉は今でも貴方を信じてます。私も・・・」
「アオイか・・彼女はいいスナイパーだった。
ありがとう。
お帰り・・・元に世界に。
・・・涙をふくんだ」
ジョニーの言葉を聞き背後に目をやると一瞬で涙を拭き平静を取り戻した。
「おーらよっと。
英雄さんよ。
もういいだろう。
サービスタイムは終了だ」
首ねっこを掴んだマスターはえらく不機嫌そうに声を荒らげた。
彼をラクラクと持ちあげると宙に浮かせる。
「た、タオルを・・」
「いらねぇーよ」
戸口までそのまま歩くと、ゴミでも捨てるように放おって投げた。
「俺からのプレゼントだ」
そう言い放つとツバを一回吐き捨てる。
一際大きなそれは見事な放物線を描いて彼の薄汚れた首に落下した。
「ストライーク」
「失せなゴミ」
「ミドリ・・・厳罰ものだぞ」
氷の針のように冷たい言葉で投げかけたが彼女はそれを完全に無視した。
「構いません」
そう言ってカウンターに戻ると、何事もなかったかのようにウェイトレスとしての仕事を再開している。
「むしろ今のかまかけは流石と言うべきかな」
イヤフォンの男は言った。
「かもな・・・いい芝居だ」
「声音に反応がなかった。ジョニーのやつ・・・」
「完全に終わったか」
「終わったな」
「女はこええなあ」
「ああ。女は怖いよ」
「後は野となれ死体となれか」
その日から嘗てジョニー・Ｂ・ジョーと呼ばれた英雄を目撃したものはいなくなった。
数日後、その店からミドリの姿も消える。
英雄と呼ばれた男の存在は過去となる。
荒廃した工場。
嘗てバーサーカーと呼ばれたヒューキャストとレインジャー達によって戦いが繰り広げられたことを
知るものはもういない。
「よしいいぞ京極」
「メイン電源オン。
あ、人工筋肉が痙攣するかもしれないから動き始めの左足にきをつけてくれ。
癖があるようだ。
下手するとタマタマ蹴り潰されるぞ」
「下品だねぇ。タマタマだって」
「タマタマ メタリックー！タマリックー！」
「わははははは」
「ワクワクしますね」
「最初、私が最初だよ。いいね私が最初に声かけるから」
「無駄だ。もうマスターはすりこんである」
「えーーーーーーーっ！」
「皆さん下がって、下がって下さい。本当に蹴られますよ」
「ドゥーラ、リフトアップ」
斜めに立てかけてあったカプセル状の製造ユニットが垂直に立ち上がる」
カプセルが開くと、そこには黒いボディにオレンジのラインが施された鮮やかな流線型の女形ヒューキャスト、ヒューキャシールが固定されていた。
今時のモデルには珍しく妖艶な姿をしている。
わずかに見える人工皮膚の見える口元は、全てを拒絶するよう真一文字に閉じられていた。
真っ赤なルージュがひかれている。
その唇には覚えがあった。
多くの者達が固唾を飲み込んで見つめる。
「カッチョいい・・・。バーン凄いや」
左足が突然動いた。
一斉にどよめく。
「おー！いい蹴りだ」
「タマどころか真っ二つだな」
拘束具が解除され、彼女は一歩前へ踏み出した。
そこへ手を差し出す男。
「ドゥーラ・・・お帰り」
手をとり声の方向に首を向ける。
「マスター・ジョニー。ご命令を・・・」
「最初の任務だ。今から言う仲間を登録し、戦闘データをダウンロード。
右からバーン・フォスター」
クールズ、
ジュゲ、
ハリュウト、
エルディナ、
ジオーサ、
京極堂、
ジーク、
そして、そこに寝ているのが」
「通行人A」
「父さん！しゃんとして」
「なんとまぁ随分と色っぽく作ったな。お前さんは機械と一発やろうってのか」
「父さん！！」
「ふっ、カンナだ。命を共有する者たちだ」
「生体認証登録完了。戦闘データをダウンロードします」
「さあ、はじめようか」
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