STG/I:第二十ニ話:特攻

ケシャがモニターから消えサウンドオンリーに切り替えた。

よっぽど嫌なようだ。

 

「つないで」

 

��このままヤツが地球を食うを待って見ているだけなのか)

 

最もヤツが地球に落ちたら食われる前に死ぬだろうが。

小さい隕石でもインパクトは想像を絶する。

アレ程のサイズならほとんどインパクトと同時に地球は終わりだろう。



「こちらアルバトロス、シューニャさんでいいかな?」
 
彼は現在最後の交戦準備を整える為に小隊や野良を吸収していると言った。
宙域に浮いている一割程度のSTGは既に搭乗員はなくログアウトしている。
俺がやったのと同様にマザーから制御権の譲渡を受けていると彼は言った。
部隊員で手分けして声かけを行っているよう。
 
ひとしきり話し、情報交換をしたが俺は断った。
 
「手は出さない方がいい」
「じゃあ君はこのまま死ぬまで待つと?」
「それとは違う。マザーやパートナーの話しではブラック・ナイトと接触すると消滅するといった」
「消滅?」
「そう死亡じゃない。消滅だ。この次元から存在そものが消える。そうだなビーナス」
「そうです。厳密にはブラック・ナイトの一部となり生き続けますが、元の生命体における構成要素は消滅します」
「え?」「え!」
聞いてないぞ。
「どのみち死ぬんだろ。このまま手をこまねいてい死ぬまで待つのか君は」
「俺はこう考える。死と消滅ではエネルギー循環で異なる。自我を失い、魂をなくし、永遠にブラック・ナイトの一部として生きる・・・そんな感じじゃないか?」
「そんなことは聞いてない。馬鹿馬鹿しい・・・。俺は輪廻転生は信じない。死は死だ!」
「俺も特に信じちゃいないけど自然界には原理的な部分でエネルギー保存の法則とかあるだろ・・・(駄目だ今はこんなこと話している場合じゃない)まあ、とにかくヤツを下手に攻撃して消滅するより、地球にヤツが突っ込んで死んだ方がまだマシなんじゃないかって思うから、俺は参加しない」
「死は死だ!黙ってされるがまま見てるってことだろ卑怯者!」
なんだコイツ。
自ら恐怖の虜になっている。
「少しは考えてもみろ。宇宙人が倒せないって言ってるんだぞ。それこそ君らがやろうとしていることは自殺と何が違うんだ?」
「だから黙って殺されるのを待つのか?」
思考停止している。
自分の考えから一歩も出られないんだ。
「忘れてないか?・・・サイトウってヤツを」
「サイトウ?・・・お前もその類の連中か・・・」
決めつけ。
「アイツは宇宙人の間者だろ」
間者と来たか。いつの時代だよ。
コイツが馬鹿なのか、部隊員まるごと馬鹿なのか。俺も含めて皆が馬鹿なのか。
「サイトウならワンちゃんあると思わないか?」
「思わないね」
考え無し。考えるつもりがそもそも無い反応だ。
「百歩譲って、どうせ攻撃するにしても他国と共同にした方がいいだろ。なんで・・」
今気づいた。
なんでこれほどの事態に他国のSTGはいないんだ。
なんで日本だけがいる。
それにSTGIは全部で七機あるって聞いたことあるぞ。
他はどうしている?
「ビーナス、他の国のSTGはどうしてる?それとサイトウ以外のSTGIは」
「他国のSTGは別の宙域で戦闘中です。STGIは確認する方法がありません」
そうだった。STGIはわからないんだ。
「戦闘中?ブラック・ナイトより優先すべき戦闘があるのか?」
「とにかくシューニャの小隊は来ないんだな」
「ごめん、ちょっと待って」
「待てない。君は不参加なんだな・・・非国民!」
「マスター、通信が途絶しました」
「なんなんだよ・・・単細胞が!だからああいう輩は嫌いなんだよ。日本人はどうしてこうも議論が出来ない。教育の仕方がそもそも時代遅れなんだよ!」
紳士的に見せ、選択肢があるように提示し、その実無い。
会社でもよく経験した。
イエス、オア、イエス。アンド、イエース、オーイエス。
「まったく」
結局は俺の言うことを聞けと思っているような輩だ。
何が非国民だ。時代錯誤も甚だしい。てめーだけが世界かよ。
「すまん・・・。ところで他国のSTGはどうして?」
「ブラック・ナイトの出現により隕石型宇宙人が攻勢を強めています。彼らが突破してきても地球は危険です」
「危険も何も黒ナマコが今まさに地球に向かってるだろ?そっちが先じゃないか?」
「ブラック・ナイトは数ではおせません」
そりゃそうか。
どうみても数の問題じゃない。
有効じゃないんだ。
一つ湖を埋めるのにどれほどの石や泥がいる?
深さもわからいのに。
それを一人一人が石やスコップを持って投げ入れてどうする。
そんなの馬鹿のすることだ。
ビーナスの最もな話。
少なくとも生きる可能性を考えているのは俺たちより寧ろ宇宙人やパートナーの方かもしれない。助かる前提で、生きる前提で全体の作戦を立案している気がする。
ということはマザー達には何か目算があるのか?
だってマザーが「何も出来ることはない」って言ったんだぞ。でも・・・
「なんで日本だけなんだ・・・」
「それはわかりません」
「・・・いや、待てよ。日本というより・・・」
 
”サイトウだ”
 
俺たちはサイトウを呼び出す為の餌なのかもしれない。
だとしたら本当に宇宙人は俺たちの味方なんだろうか。
俺たちのというより、連中を食い止めようとしている。
サイトウは今どうしている。
なんで来ない。
来れないのか?
颯爽と最後には来てくれるんじゃないのか。
本拠点急襲の時もギリだったそうじゃないか。
とうことは、希望が持てる?
でもマザーは効果的な攻撃方法が無いと言った。
サイトウでも無理なんじゃないか?
 
「・・・そうか」
 
未知のSTGIと未知のブラック・ナイト。
宇宙人らにとってはどっちも未知の存在なんだ。
嘘は言っていない。
 
「どうなるか・・・誰にもわからないんだ」
 
なら、希望はゼロじゃない。
 
「聞いた通りだ。俺はこのまま並走しチャンスを待ちたい。サイトウのSTGIが万に一つなんとかしてくれる可能がある。二人はしたようにしてくれたらいいよ。どうする?」
小隊モニターにケシャが映る。
「一緒にいる」
「僕はとっくにシューにゃんの下にいるから、従うよ」
「従わなくていいよ。君が思う通りにしてくれれば」
「・・・シューにゃんは本当に難しいことを言うね」
「そうかね」
彼は少し困ったような顔をした。
理由はわかる。
彼らの自我はあくまで主従関係がある。
「シューにゃんと一緒にいる」
「わかった」
 
残された多くのSTGが一箇所に纏まりつつある。
戦局がリアルタイムで映し出されており、離散集合が一発で視覚化。
シューニャ以外にも少なからずのSTGが参加しないようだ。
それでも参加者はかなりの数に登る。
明らかに残機の五割以上。
ほぼ全てが有人だろう。
 
緊張で汗が出てきたような錯覚をおぼえる。
でも、手は乾いていた。
 
「始まった」
 
瞳孔が開きモニターに釘付けになる。
 
彼らの作戦は単純だった。
人類が困った時にする方法はいつも一つ。
ブラック・ナイトの先端からガス雲に一直線に突入し、あるであろう表層へ向けて攻撃を仕掛けるというもの。
先頭はディフェンダー特化から構成し、次に通常装備でディエンス装備をしたもの、中核後部に攻撃型を配置し、最後発に諜報装備。一考すると即席にしてはよく考えられたように思えなくもない。恐らく俺もマザーとの対話が無かったら乗った可能性すらある。攻撃は二回に分けて行い、一回目の諜報結果を受け二度目の突入を試みる。俺のホムスビには最初に参加して欲しいと打診された。
驚いたことにアルバトロスや発案者となった部隊は後続組。それも引っかかった。発案者が高みの見物なのだ。そうした場合、かなりの確率で・・・逃げる。最もおかしいのが、この作戦には本質的な課題が抜け落ちている。
 
��TG28にはブラック・ナイトに効果的な攻撃装備が存在しない。
 
アルバトロスには伝えたが彼は受け入れなかった。二言目には「死ぬまで待つ気か!」「臆病者」ときた。彼らの中では既に確固たる結論がある。会社でのクソ会議や政治家と同じ。最初から結論ありき。同意したという既成事実が欲しいだけ。議論をする気もアイデアを募集する気もない。自分は安全圏の中にいて臆病者と言われた日には噴飯物だ。
「シューさん・・・怖い」
モニター越しに震えているのがわかる。
「俺も怖いよ・・・ケシャはログアウトした方がいい」
「いや・・・一人はイヤ・・・」
わからないものだ。
さっきがほとんど初めての会話みたいなものだったのに。
俺の何を見て彼女はここまで思い詰めたのか。
人間というのは本当にわからない。
ああ・・・誰かを抱きしめたい、強く。
誰かに抱きしめられたい。
 
吸い込まれるように突入する。
 
��TG28達が・・・恐らく片道キップ。
多くの搭乗員はいざという時の為にログアウト出来るようパートナーとは打ち合わせ済みだろうが果たしてログアウト出来るのだろうか?そもそも消滅とは。
 
��ああ・・・小さい・・・余りにも小さな光だ・・・)
 
帯びとなって白金色のSTGが暗黒に飲まれていく。
諜報機からの情報は連合以外では表示されないようにしているようだ。
情報共有がされていない。
マザーはトレースしているだろうが彼らはマザーに情報の秘匿を指示している可能性もある。
その手の連中は考えることは同じ。
マザーに問い合わせてみたが、やっぱり情報が上がってこない。
この期に及んで既得権益を守ろうとする輩。
断って良かったとつくづく思う。
最後尾の諜報機が暗黒に飲まれていった。
 
「ああ・・・」
 
ビーナスの今まで聞いたことが無い悲壮感に満ちたため息が聞こえる。
「どうした?」
 
「消滅しました」
 
「うそ!え・・・」
連合部隊リストが一瞬で真っ黒になっている。
「・・・」
ケシャが黙り込んだ。
 
��消滅した)
 
「ケシャ・・・」
「嫌だ、一緒にいる!」
聞かないか。
「アルバトロスにつないでくれ」
「了解」
何が起きたか確認したい。
もう何十機も残っていない。
身体が震えている。
止められない。
それなのに眠い。
頭が痛い。身体が重い。
今が踏ん張りどころなのに。
身体が言うことをきかない。
「駄目です。繋がりません・・・拒否リストに登録されたようです」
なんなんだよアイツ。
「連合の他の機体に誰もでいいからコールしてくれ」
「了解」
動かない。
第二波はどうした?
どうして動かない。
やっぱりか・・・。
なら、どうして行かせた?
ログアウト出来たんだろうか。
中はどうなっているんだ。
ビーナスはかなりの距離を保っている。
 
第二陣が退いている。
 
どうして後退する。
お前ら・・・。
「繋がりました。通信者の相手は”三毛猫のマタンゴ”です」
なんだその名前。
「つないで」
「了解」
「こちらシューニャ、三毛猫さん応えてくれてありがとう」
「お前、スパイを匿っているだろ!」
はっ?何言ってるんだコイツ。
「第一波はどうなった?何が起きた」
「教えねーよ裏切り者が!それよりお前の小隊に地雷女いるんだってな」
「何のことだ?」
「ケシャだよケシャ、地雷女!どこにいる姿を見せろ!」
何だコイツ、頭平気か。
「ケシャ、コイツ誰?知り合い」
「知らない・・・私、知らない・・・」
知らない風でもないな。
「アイツはスパイなんだよ!この前の戦いで味方を撃ち落としやがった。沢山やられたんだぞ!」
ケシャを見ると耳を塞ぎ、頭を振っている。
「この前より今だ!今どうなってる!」
「うるせー!地雷女をよこせ!」
なんなんだよ、どうしてこんなクソしかいねーんだ。
「一方的に連絡しておいてすまなかった。これで通信を終える」
「勝手に切るんじゃねー!」
ビーナスを見て頷くと、彼女は応えた。
「通信切断しました」
「今のヤツ、ブラックリストに入れておいて・・」
「了解しました」
ブラックリストは余程のことがない限り利用しないが、今のヤツは無理だ。
 
「第二波 動きました」
 
「どうでるか・・・」
控えていた部隊がゆっくりと動き出す。
「・・・まさか」
先頭らしき諜報特化のSTGが何かを探しているように見えた。
「どうしたビーナス」
「こちらに向かって来るようです」
ディエンス一機、オフェンス二機の三機が続く。
「なんで?」
速度はゆっくりだが、確かにこちらに機首を向けている。
「わかりません・・・」
「勘違いだよ。そもそもスネーク中だからわかるはずがない・・・」
「いえ必ずしもそうとは言えません。マスター・ケシャのワンダーランドをスネーク内に匿う際に再展開しましたが、その段階で大凡の位置はマークされます。また、こちらから通信接続をするとどうしても着信相手にはある程度の位置はバレますので」
「まさか・・・でも、それどころじゃ無いだろ!」
諜報特化型のSTGが下がるとオフェンスの攻撃特化型一機が前へ出る。
「マスター!フレンドリーファイヤの接続を確認!」
「嘘だろ・・・何を考えているんだ・・・」
先端が赤色化。
あれは確かレベル八の装備で見たことが有る。
広範囲へエネルギー状の矢を降り注ぐ。
「高エネルギー反応!撃ってくるつもりです!」
 
「スネーク反転・シールド全開!」
 
次の瞬間に空域に真っ赤な光のヤジリが雨のように貫いていく。
一部がスネークの網にかかりシールドで弾かれた。
その瞬間にホムスビ、ワンダーランド、ミネソタの姿がモニターに映り、再び消える。
スネーク中のエネルギー網を瞬時にシールドネルギーに変換。その硬さはディフェンダー装備並の効果能力があるが一時的に完全に丸見えとなってしまう。
「これを狙っていたのか」
「来ます!」
どうしてだよ。
なんでそうなる。
目の前の黒ナマコが見えないのか。
 
「ブラック・ナイト、第三防衛戦通過」
 
お前たちの愚策で今まさに消えていった連中が見えなかったのか。
サイトウはどうして来ないんだ。
なんでコイツらはこうまで馬鹿なんだ。
この期に及んで・・・。
ケシャが身体を丸め頭を抱え込んでいる。
アームストロングが指示を仰ぐような目で見る。
ビーナスが言葉を待っている。
どうする・・・。
「スネークを展開したまま上部コックピットをパージ!尾部は最大出力で脱兎後ランダム飛行、宙域を離れ本拠点へ帰還せよ。アームストロング、ハッターはビーナスにシンクロしたまままスネークから出るな」
「了解マスター」
「シューにゃん・・・」
「シューさん、どういうこと」
「ケシャ・・・ゴメン。お別れだ。ビーナス、カウントダウン」
 
「待ってよ!」
 
「3・2・1、パージ!」
 
ビーナスの声と同時にホムスビの上部が分離された。
諜報装備ならではの構造で頭部と尾部いずれかにコックピットを移動出来る。
同時にレーダー網に反映。
スネーク内にいた二機とホムスビの尾部は姿を消したまま宙域を離れていく。
ホムスビに気をとられた二機は一瞬で彼女らを見失った。
「マスター、緊急通信」
もうヤケクソだ。
「オープン回線で接続してくれ」
好きにしろ馬鹿共が。
「お前は何をしているかわかっているんだろうな!」
「お前らこそな」
「スパイを匿うヤツもスパイだ!」
「殺せ!殺せ!」
「死刑だ!」
「寝言は寝てから言えよ」
ジェスターで指示。
「通信切断しました」
うんざりだ。
本当に、現実でのお前らも、ゲームでのお前らも。
サイトウもこねーし。
どいつもこいつもクソばっかりで。
とっとと滅んじまえよ。
こんな地球なんか。
「マスター、再度、撃ってくるつもりです!」
だろうな。
腹をくくれ自分。
「ビーナス、ありがとう・・・今まで悪かったな」
「え?」
「マザー、パートナーをホムスビから解任、マイルーム一時預かり」
「マスター!」
パージされた部分で出来ることは僅かな推進とシャワー・ガンマの発動のみ。
共に死ぬこともない。
もっともパートナーは死なないんだろうが。
それでも嫌なんだ俺は。
��Iだろうが見捨てるのは。
全くエエかっこしいだな。
言われるわけだわ。
昔、俺を振った彼女が言っていた。
「ええ格好しい!」
でも嫌なんだ。
嫌なんだ・・・。
 
マザーが応える。
 
「確認しました。パートナー解任。ルーム預かり。本機コンピューター接続。コントロールを搭乗員シューニャ・アサンガに戻します」
 
ビーナスがモニターからログアウトしコントロールが戻る。
 
��終わりが来た)
 
モニターが真っ赤に染る。
即刻攻撃すると思いきや、彼らが急速に撤退していく。
それでも警告ランプはお祭り状態。
「警告、ブラック・ナイト接近、警告、ブラック・ナイト接近」
「ブラックナイトが動いた?こっち側へ来る」
地球を真っ直ぐに目指していたブラック・ナイトが初めて向きを変えた。
どうして?
「全速反転!」
って、自分でやらんといかんのか。
機首を反転させ、全速発進。
ノロノロとしてパートナーのようにはいかない。
しかも明らかに推進力が足りていない。
「あんなデカイのになんでこんなに速いんだ!理不尽だろ!設計者出てこい!」
距離がどんどん詰まっていく。
残ったSTG達が慌てて距離をとり離れていく。
ホムスビのコンピューターが応える。
 
「ブラック・ナイトの重力圏内に入りました。落下します」
 
ホムスビは吸い寄せられるように暗黒ガスの中に落ちていこうとする。
 
「シャワー・ガンマ全開!」
 
ハリネズミが身を守るように全方位へレーザーを発射。
 
花弁に着粉する花粉のように落ちていく。
 
「落ちる・・・」
 
みるみる飲み込まれていく。
 
暗黒の中へ。
 
��終わりだ)
 
闇に落ちていく。
 
��終わり)
 
虚無に飲み込まれていく。
 
「死ぬんだ」
 
見上げた先は満点の星々。
 
「死だ」
 
周辺部が次第に漆黒に染まり、闇の中に落ちていく。
 
センサーが反応を拾えず「未検出」と出る。
 
��まるで動くブラックホールだ)
 
もう星は幾らも見えない。
 
コックピットは赤黒く染まった。
 
落ちていく速度が上がる。
 
��死にたくない)
 
そうだ・・・。
 
「ログアウト!」
 
「音声認識エラー」
 
ログアウトしない。
 
「ログアウトぉ・・・メニューのログ、アウ・ト!」
 
��TGが悲鳴を上げている。
 
「反応しろよ!なんで!」
 
��そうか)
 
さっきの連中も、ログアウト出来なかったに違いない。
 
��捕食)
 
タップするがログアウト出来ない。
 
��消滅、未来永劫・・・この宇宙から)
 
船体モニターから外郭に亀裂が広がっていることがわかる。
 
避けるボディの歪がまるでホムスビの悲鳴にように聞こえる。
 
「ホムスビ・・・頼む・・・ログアウトさせてくれ!」
 
何度もメニューをタップするがログアウトせずエラーで返す。
 
頭が痛い割れそうだ。
 
目が右目しか開けられない。
 
このまま大破してはいけない気がする。
 
��そうだ!)
「タスクマネージャー・・・強制終了・・・しない・・・なんでだよ!」
 
完全な闇に飲まれた。
 
��回線を抜くか、PCの電源を切るしかない!)
 
回線には手が届かない。
 
��電源だ!)
 
自らの意思に反し、一瞬で意識が遠のく。
 
世界がスローモーションに見える。
 
交通事故を思い出した。
 
あの時もそうだった。
 
自分が椅子からズレ落ちるのがよくわかる。
 
マイPCが目前。
 
ガンメタブラックのボディがお気に入りだった。
 
��あんまりピカピカ光るのは好みじゃない)
 
どうでもいい言葉がよぎる。
 
��高い機能性と操作性、質感、メンテナンス性)
 
畳が右側頭葉に迫る。
 
軽くバウンド。
 
��消滅)
 
最後にこの二文字が浮かび続いて両親と兄姉、甥、姪の顔。
 
そして闇に飲まれた。

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