(長編)限りなくグレー

優柔不断で自殺願望の強い孤独な少女の内面の声を中心として展開していく小説。

孤独感に苛まれる少女が、ある人物との出会いから徐々に変化していく様が描かれる。



彼女は今でいう引きこもりではない。わりと社交的で、成績もまずまず優秀、運動神経もそこそこ、多くの友人をもち信頼され相談も多い。そして目上からの信望もあつく、約束も守る。趣味は多く多才な面をもつ。外見は美人というほどでもないが、そこそこ美貌をもち、スタイルも悪くはない。



彼女はいつも自分がなぜこうも孤独感に苛まれているのか悩んでいた。また、それを打ち明ける家族も友人も目上の人もいないと思っている。「この世に自分の理解者いない」それが彼女の口癖だった。

「いつ死んでもいいけど、痛いのは嫌だし、死んだ姿を見られるのも嫌だ」

時々モデルガンに火薬をつめて弾をこめ、こめかみに銃口を向ける。だが、一度も引き金が引けたことはない。

「ここがアメリカだったら私はもうこの世にはいないな。日本でよかったと言うべきか、アメリカがよかったというべきか」

家族を悲しませたくはない。だから自殺は思いとどまっている。ただし、いよいよになればやるつもりだ。その為に、いかに楽をして綺麗に命を絶つか。それが彼女の悩みだ。

「死んだ後に誰かに触られまくられるのは嫌だなぁ。爆死って一瞬みたいだし、バラバラになればもう死体とも言えないし、爆死がいいかな。でもグロイなー。本当に爆死した人に失礼だし。それにやっぱりお墓にはいれてもらいたい。その瞬間も怖いし」



そんな彼女がはじめて本音を思わず言える相手が出来た。

彼はまるで勉強をせず体育や集団行動に参加せず、字ばかり書いている少年だった。

クラスではのけ者の彼は彼女に声をかける。

「きみ、芸術的素養があるね」

彼は彼女の顔をみるたびに「やったほうがいいよ。勿体無い」と声をかける。

最初は周囲に接するようにしていた彼女だが、明け透けな彼に我慢の限界を越え、二人になると言い合いとなった。

「この世の中に白黒判断できることなんていくらもないじゃない」

��バカじゃないの)

「全部、白黒で判断できるよ」

��真性バカね)

「あんたみたいに世界がシンプルだったら誰も苦労しないわよ!」

��あーもー早くこの場を離れたい)

「シンプルも何も、自分がそうしたいか、そうしたくないか、で白黒つくでしょ」

��何いってんのコイツ)

「限りなくイエスだけど、イエス80%の場合と、ノー20%の場合だったあるでしょ」

「だったらそれはイエスじゃない」

「私はノーが20%あるってことを言いたいの!」

「迷っているなら、それはノーってことだよ」

「あなたみたいな人ばかりだったら、この世はとっくに破滅しているわね!」



最初は嫌で嫌でたまらなかった彼女だが、次第に彼のその生きる姿に痛烈な共鳴をする。

それでもなお自殺願望の消えない彼女は自分に嫌気がさし遂に決行することにするが・・・。


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